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治療継続率を上げるには?<ノバルティス(Medical Field Partner)とのディスカッション>

第7回】治療継続率を上げるには?<ノバルティス(Medical Field Partner)とのディスカッション>

先日、ノバルティス(Medical Field Partner)様からタスクシフトについて取材を受けましたのでその内容を投稿いたします。

彼らは「薬剤以外のアプローチで生活習慣病の治療継続率を上げ、患者様の健康寿命を伸ばす方法はないかを医療機関と一緒に考えていく」という活動を行なっているそうです。

具体的には医療機関での労働環境の改善やホスピタリティー向上などを通して、患者様視点での通いやすい医療環境を目指し、患者様と医療との接点を切らさず治療継続を向上させるための取り組みを模索しています。

当院でも開院以来、「健康寿命を伸ばすための予防医療」に力を入れております。私どもの考える健康寿命とは、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な心臓・血管合併症を未然に防ぎ、第三者からの支援なく、可能な限り自立して生活ができる状態を保つことだと考えております。そのため、当院でも脳梗塞や心筋梗塞を未然に防ぐ上で、生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症など)を適切に管理することは非常に重要だと考えております。

この度、「治療継続×タスクシフト」をテーマに対談を行いました。ノバルティスの皆様は今回の対談のためにわざわざ東京や沖縄など遠方より当院にご来訪頂きました。

今回の論点は生活習慣病の適切な管理を行うために、いかにドロップアウト(通院の自己中断)を防ぎ、治療を継続していくかが課題となります。そのために、医療機関側はいかにタスクシフトを活用して、患者様が通院しやすい環境を整えていけるかを考えてみました。

 

Q1 患者様が通院しやすい環境とはなにか?

ひとえに患者様の受診体験を向上させることが鍵だと思っています。それには医師個人の力だけではなく、クリニック全体の総合力が重要だと考えています。

 

Q2 受診体験を向上させるためにはどうすればいいか?

アクセス(立地)、予約が簡単、少ない待ち時間、丁寧な診察、高いホスピタリティ、次回予約の取得やリマインドメールで再来を促す…etcを整備することだと思います。好アクセス(立地)についてはすでに開業されている場合の改善方法は難しいですが、それ以外は十分改善の余地があると思っています。

 

Q3 予約を簡単にするにはどうすればよいか?

当院では予約システムを活用しています。特にLINE予約は高齢者でもできる方が多いのでおすすめです。また、予約方法を LINEやWEBに分散させることで電話での予約対応を減らすことでスタッフの業務量軽減につながると考えています。

予約システムについてはこちらの記事も参考にして頂ければと思います。

機械へのタスクシフト<予約システム>

 

Q4 院内での待ち時間を短縮するにはどうすればいいか?

待ち時間短縮には主に4つの時間に分けて考えるとわかりやすいと思います。

①問診入力の時間

普通であれば患者様が院内に到着してから問診を記入してもらうので一般的ですが、WEB問診システムを活用することで、問診入力を自宅で済ませてもらうことが可能です。これにより院内での問診記入の時間が短縮され、その分早く診察が始められるようになります。

②カルテ作成や保険証登録の時間

初診の患者様はカルテ作成に時間がかかることがありますが、WEB予約・問診を活用することで、来院前からある程度患者様情報を入手することができるので、カルテ作成や保険証登録の時間を短縮することができます。

③診察時間

ここが一番のボトルネックであり、解消が困難な時間だと考えています。

当院ではクラークシステムを構築することで診療の質を落とさず、スピーディーに診察できる方法を模索しています。

④会計時間

電子カルテから自動精算機に患者様の会計情報が直接飛ぶので、会計の時間を短縮することができます。

院内の待ち時間時間についてはこちらのページで詳しく記載しております。

機械へのタスクシフト<WEB問診・事前患者情報入力>

 

Q5 丁寧な診察を行うにはどうすればよいか?

丁寧な診察を行う上で、まずは患者様の目をしっかりとみて診察してあげることが重要だと考えています。電子カルテの時代になり、医師が診察中にモニターを見てキーボードをカチャカチャ叩いて、患者様の顔をほとんど見ずに診察が終わることが多くなったような気がします。これでは丁寧な診察ができるとは思えないですし、当然患者様の満足度も高くなるわけがありません。そのため、これを改善する方法のひとつにクラークシステムがあります。いわゆるシュライバーさんを隣に置き、医師は診察中、キーボードをほとんど触れることがありません。当然、目は患者様に向けられますし、空いた両手で丁寧に身体所見がとれるようになります。

クラークシステム構築には各科の特性もあり、一概にこれというものはありませんが、ある程度セット化する必要はあると思います。特に内科系はセット化との相性が悪いので、実践する上で難渋することが多いかと思いますが、じっくりやれば必ず達成できると思っています。

 

Q6 高いホスピタリティを実現するために必要なことは?

高いホスピタリティはもちろんスタッフ自身のマインドに寄与する部分も大きいですが、その気持ちを、最大限活かせるような職場環境や仕組みづくりが大切だと考えています。

仕組みづくりは上記のようなタスクシフトを中心に実践していくのですが、職場環境はどのように構築すればよいのか。

そこの土壌づくりとして当院ではInside-Out(「7つの習慣」スティーブン・R・コヴィー)という考え方が重要であると考えています。

「内側」から「外側」へ。

Inside(クリニックの職場環境)の良さは、

Outside(患者様)に必ず伝わる。

良い職場環境には心理的安全性の確保が必須です。お互いに尊重しあいながら、それぞれの意見を言える風通しの良さや、自分も相手も気持ちよく働けるよう配慮することが心理的安全性に繋がります。これら土壌となる環境を整えた上で、それぞれの職務に全力投球できるよう、仕組みづくりの一つとしてタクスシフトを上手に活用しながら、一つのチームとして最善の医療を提供することが高いホスピタリティに近づくコツだと考えています。

そしてクリニックのInsideの良さが、一人でも多くの患者様に伝われば「ここのクリニックは雰囲気も良いしまた行きたいな」と思って頂けれると信じていますし、それにより自然とドロップアウトは少なくなり、多くの患者様の治療継続に繋がるのではないかと考えています。

今回はノバルティス(Medical Field Partner)様と「治療継続×タスクシフト」をテーマに対談させていただきました。

患者様のドロップアウト(通院の自己中断)を防ぎ、治療を継続していくことは簡単なことではありません。当然、専門医の立場から病気についての啓蒙を行うことも必要ですが、それだけでは治療継続に繋がらないと考えられます。患者様も一人の人間です。患者様がまた通いたいと思えるクリニックの環境を整えるのは、私どもの責任だと考えております。これからもタスクシフトを通じてクリニックの通院環境がより良くなるよう、当院でもできることを一つずつ実践して行きたいと思います。

 

【タスクシフト研究会 バックナンバー】

【第1回】クリニックにおけるタスクシフトとは?

【第2回】「機械ができる仕事は機械に任せて、人にしかできない仕事をする」

【第3回】機械へのタスクシフト<自動精算機>編

【第4回】機械へのタスクシフト<WEB問診・事前患者情報入力>編

【第5回】機械へのタスクシフト<予約システム>編

【第6回】内科クリニックの運営を変える「タスクシフト」とは?<メディカル革命 byGMOとのオープンディスカッション>

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