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心不全について

皆さんは普段の生活の中で、息切れやむくみ(浮腫)、夜間就寝時の呼吸困難感や咳などを自覚された事はありませんか?このような症状がある場合、心不全の可能性があります。

心不全とは?

皆様も「心不全」と言う名の病気を一度は耳にしたことがあるかもしれません。心臓は全身に血液を送る筋肉の塊のような臓器で、自分の意志に関係なく運動時はもちろんのこと、寝ている時もずっと動き続けています。しかし、何らかの原因で血液ポンプとしての働きが弱まると、息切れや浮腫などの症状が出現します。実は「心不全」とは病気の名前ではなく、心筋梗塞弁膜症不整脈高血圧症などの病気が原因で、心臓に障害が起きた結果引き起こされる「病態(≒症候群)」のことをいいます。日本循環器学会では心不全を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です」と説明しています。また、アメリカ心臓協会(AHA)では心不全を病状に応じて「ステージA」から「ステージD」の4つに分類しています。ステージが上がるにつれて重症度も上がっていきます(下図参照)。ステージA/Bではまだ心不全症状は認めませんが、ステージCでは症状を認めるようになります。ステージが上がるにつれて生命予後も悪化するため、それぞれのステージで適切に治療をすることが推奨されています。

心不全の症状は?

初期症状は体動時の息切れや動悸、疲労感などですが、安静にすれば症状は良くなります。しかし徐々に病状が悪化すると、就寝時の呼吸困難感や起座呼吸(きざこきゅう:横になるより座っていた方がラク)などを生じるようになり、安静にしていても息苦しさや動悸を伴うようになります。またそれ以外に浮腫、食欲減退、便秘、お腹が張る感じなど多彩な症状が出現します。

心不全の検査は?

心不全が疑われる場合、胸のレントゲンで心臓が大きくなっていないかや肺の周りに水が溜まっていないかなどの確認をします。また、心電図検査で波形変化や不整脈の有無を確認をしたり、心エコー検査で実際の心臓の動きやサイズ、心臓のポンプとしての機能の評価、弁膜症の有無など心臓に関するあらゆる所見を観察します。採血検査では心臓に負担がかかった時に上がるBNPやNT -proBNPという数値を測り、心不全診断の補助として用います(下図参照)。これらの検査所見を総合的に判断して心不全の原因や重症度及び治療方針を考えていきます。背景に狭心症が疑われる場合は必要に応じて心臓CTやカテーテル検査のため、近くの連携病院にご紹介することもあります。

(日本心不全学会より)

心不全の治療は?

心不全の治療は、心不全のステージごとに考えるとわかりやすいかと思います。上記の通り、心不全はステージAへからステージDまであります。無症状のステージA/Bでは心不全の発症予防に重点が置かれ、症状が出てくるステージC/Dでは心不全症状の改善に加えて、心不全の悪化や再発予防、生命予後の改善を図ることに重点が置かれます。

ステージA/Bの治療

治療は主に心不全発症予防です。高血圧の治療や肥満・糖尿病の管理、運動の推奨や喫煙・過度のアルコール摂取の防止、狭心症治療弁膜症の管理など、「予防」が治療の中心となります。

ステージC/Dの治療

このステージになると心不全症状を伴うようになるため、症状を改善する治療を行います。具体的に心機能に応じては、尿をよく出させるお薬(利尿剤)を使用して心臓の負担を取ったり、心臓を保護するお薬(ACE阻害薬やβ遮断薬と呼ばれるものなど)を使用します。また、近年では糖尿病薬が心不全治療の適応にもなり使用されるケースも出てきており、薬物治療も日進月歩で進化しています。しかしどうしても薬物治療のみでは限界のある治療抵抗性の心不全では、病状によっては心臓の手術などを行う場合もあります。

 

(日本循環器学会ガイドラインより)

患者様ご自身が日常生活でできること

①内服

お薬を開始して症状がよくなっても心不全が治ったわけではありません。しっかりとお薬を継続することで悪化を防ぐことが重要です。そのため内服薬の自己中断は禁物です。お薬をしっかり続けて、心不全と上手に付き合っていくことが大切です。

②塩分制限

塩分の取りすぎは心臓に負担をかけてしまいます。また、浮腫の原因となるため体中に水分が溜まってしまいます。日本人の平均的な食塩摂取量は一日12gといわれていますが、軽症の慢性心不全では一日7g程度に制限が必要と言われています。一日7gは日本人にとって薄味に感じるかもしれませんが、なるべく塩分は控えるよう心がけましょう。

③適度な運動

心不全の重症度に応じた適切な運動は、生活の質の改善や心不全の悪化及び入院を減らすことがわかっています。過度な運動はよくありませんが、息切れが生じない範囲で徐々に負荷を上げていくことが望ましいです。

早期発見で悪化を防ぐ

近年、高齢化が進み心不全患者は増加の一途を辿っています。高齢者の中には日常生活で息切れを感じているが、「歳のせい」と諦めて医療機関を受診せずにいる方が多く見受けられます。そして調べてみると心不全だったということも珍しくありません。心不全はなるべく早期から治療介入して悪化を防ぐことが大切です。日常生活で、息切れやむくみなど心不全を疑うような症状がある方はお気軽に当院にご相談ください。当院では循環器専門医がその患者様に合った適切な検査及び治療をご提案させていただきます。

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