甲状腺について
甲状腺は、私たちののどぼとけのすぐ下にある、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。この小さな臓器からは、全身の新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンという大切な物質が分泌されています。甲状腺の病気は、特に女性に多いことで知られていますが、男性やお子さん、ご高齢の方まで幅広く見られる疾患です。
甲状腺の異常は、疲れやすさや動悸、気分の落ち込みなど、一見すると「ただの疲れ」や「年齢のせい」と見過ごされがちな症状として現れるのが特徴です。甲状腺のトラブルは、適切な治療を受けることで、多くの場合、症状の緩和を目指すことができます。お一人で悩まず、まずは当院へご相談ください。
甲状腺診療で診る症状
甲状腺の病気は、ホルモンの量が多くなりすぎる場合と、少なすぎる場合で、体に現れるサインが全く異なります。以下のような症状に心当たりがある方は、甲状腺の検査を検討してみましょう。
甲状腺ホルモンが多くなりすぎているサイン
体の代謝が異常に高まり、常に全力疾走をしているような状態になります。そのため、じっとしていてもエネルギーを消耗してしまいます。
- 動悸や息切れがしやすく、脈拍が速くなる
- 指先が細かく震えることがある
- 食べているのに体重が減っていく
- 汗を異常にかきやすく、暑がりになる
- イライラしやすかったり、落ち着きがなくなったりする
- 軟便や下痢が続く
動悸の詳細については「動悸がする」のページを参照してください。
甲状腺ホルモンが不足しているサイン
体全体のエンジンがかかりにくい状態で、すべての代謝がゆっくりになります。活動エネルギーが不足するため、心身ともに「お休みモード」になってしまいます。
- 常に体がだるく、やる気が出ない
- 寒がりになり、皮膚が乾燥してカサカサする
- 食べていないのに体重が増える
- 顔や手足がパンパンにむくむ
- 便秘になりやすくなる
- 物忘れが増え、言葉がゆっくりになる
足のむくみの詳細については「足がむくむ」のページを参照してください。
その他の首回りの違和感
ホルモンバランスの乱れだけでなく、甲状腺そのものの形が変わることで気づく場合もあります。鏡を見たときや、ご家族からの指摘で発見されることも少なくありません。
- のどのあたりが腫れている、膨らんでいる
- 物を飲み込むときに違和感やつっかえる感じがする
- 声がかすれるようになった
- 首のあたりに硬いしこりを感じる
甲状腺診療で診る主な病気
甲状腺の病気は、大きく分けて「ホルモン分泌の異常」と「しこりができる異常」の2つのパターンがあります。ここでは代表的な疾患について、どのような特徴があるのかを解説します。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
自分の体を攻撃してしまう「自己抗体」によって、甲状腺が刺激され続け、ホルモンが過剰に出すぎてしまう病気です。20代から50代の女性に比較的多く見られます。適切な投薬治療を継続することで、ホルモン値を正常に保ち、日常生活に支障がない状態を目指せます。
橋本病(慢性甲状腺炎)
甲状腺に慢性的な炎症が起こり、次第にホルモンを作る力が弱くなっていく病気です。成人女性の10人に1人程度が持っているとも言われるほど頻度が高い疾患です。機能が低下している場合は、甲状腺ホルモン薬を服用して不足分を補う治療を行います。
亜急性甲状腺炎
ウイルス感染などが原因で甲状腺に炎症が起こり、一時的に首の痛みや発熱、動悸が現れる病気です。炎症によって甲状腺内に蓄えられていたホルモンが血液中に漏れ出すため、一時的にホルモン過剰の症状が出ます。経過観察や消炎鎮痛剤で改善することが一般的です。
甲状腺腫瘍(結節性甲状腺腫)
甲状腺の中に「しこり」ができる状態です。良性腫瘍が大半を占めますが、中には悪性のものも存在します。超音波検査などのため、必要に応じて専門病院と連携して精密検査を行います。
甲状腺に関する検査の流れ
当院では、患者さんの負担を考えながら、診断に必要な検査を迅速に進めていきます。甲状腺の病気が疑われる場合、主に以下の検査を行います。
血液検査
血液中の甲状腺ホルモン(FT3、FT4)や、脳から甲状腺へ命令を出すホルモン(TSH)の量を測定します。また、自己免疫の異常を確認するための「抗体」もあわせて調べることがあります。これにより、ホルモンが足りているのか、どのような原因で異常が起きているのかを客観的に判断できます。
超音波検査(エコー検査)
首の表面からゼリーを塗り、甲状腺の大きさや形、炎症の状態、しこりの有無を画像で確認します。痛みはなく、リアルタイムで内部の状態を確認できる非常に優れた検査です。必要に応じて専門病院と連携して検査を行います。
甲状腺についてのよくある質問
Q1. 甲状腺の病気は遺伝しますか?
A1. バセドウ病や橋本病などは、体質的な要因(遺伝的素因)が関係していることがありますが、必ずしも親から子へ遺伝するわけではありません。ストレスや出産などの環境の変化が引き金になることもあります。ご家族に甲状腺疾患がある方は、気になる症状があれば早めにチェックすることをお勧めします。
Q2. 治療を始めたら、ずっと薬を飲み続けなければなりませんか?
A2. 病気の種類や状態によって異なります。例えば橋本病で機能が低下している場合は、不足分を補うために長期の服用が必要になることが多いです。一方で、バセドウ病の場合は、数値が安定し、寛解(症状が落ち着いて安定した状態)に至れば、薬を中止できるケースも少なくありません。
Q3. 食べ物で気をつけることはありますか?
A3. ヨード(ヨウ素)を多く含む海藻類(特に昆布)の過剰摂取は、甲状腺の機能に影響を与えることがあります。ただし、極端に制限したり、逆に大量に摂取したりする必要はありません。通常のバランスの良い食事であれば問題ありませんが、具体的な食事指導については診察時に個別にアドバイスいたします。
Q4. 子供の甲状腺の病気も診てもらえますか?
A4. はい、もちろんです。当院には小児科専門医である副院長が在籍しており、お子さんの甲状腺のトラブルについても専門的な視点から診療可能です。「学校で首の腫れを指摘された」「最近疲れやすそうで元気がない」といったお子さんの変化が気になる保護者の方も、安心してご来院ください。
まとめ
甲状腺の病気は、診断がつくまでは「単なる更年期障害」や「自律神経の乱れ」「うつ病」などと間違われてしまうことも少なくありません。本当は病気が隠れているのに、周囲から「怠けているだけ」と誤解され、お一人で苦しまれている患者さんをこれまで数多く拝見してきました。しかし、原因が甲状腺にあることが分かれば、それに応じた治療を行うことで、驚くほど体が楽になることがあります。
私たちは、ただ薬を出すだけでなく、患者さんが「自分の病気がどういう状態で、これからどうなっていくのか」をしっかり理解し、前向きに治療に取り組めるような説明を心がけています。どうぞリラックスして、あなたの今の体調を教えてください。スタッフ一同、温かな笑顔で皆さんをお迎えいたします。
